県庁にお勤めですか、それはエリートですね
都道府県庁(以下まとめて県庁とします)職員と聞くとどんなイメージでしょうか。
織田裕二の主演の映画、『県庁の星』では主人公の肩書きが「エリート公務員」でしたが、県庁職員と言えばエリートなイメージが強い人もいるかもしれません。
私は地方出身ですが、大都市ではない県の県庁職員といえば、給料もよく、エリートなイメージを持たれがちに感じます。
本記事では、そのイメージが正しいものなのかを元都道府県庁職員の私が解説したいと思います。
県庁職員だからといってエリートなわけではない
身も蓋もないですが、結論は「県庁職員だからといってエリートなわけではない」です。
そもそも「エリート」とはどういう意味でしょうか。
社会や集団で、指導的、支配的役割を受け持つ層。選良。「エリート意識」
出典:小学館 デジタル大辞泉
ある社会において、将来その社会の知的指導者層の一人となりうるような優秀な素質、力があると認められた者。また、その結果として社会的に高い地位を与えられて、指導的な役割を果たしている人。選良。
出典:精選版 日本国語大辞典
「将来その社会の知的指導者層の一人となりうるような優秀な素質」とか、「社会的に高い地位を与えられて」とか「指導的、支配的役割」がポイントそうですね。
「社会的に高い地位」というところから、一般的なエリートのイメージである「お金持ち」とか、「高学歴」とか、そういうものも含まれるかもしれません。
まとめると、エリート足り得る要素は以下の4点になるのではないでしょうか。
- 知的指導者になれるだけの優秀な素質がある
- 指導的、支配的な役割を果たしている
- お金持ちである(社会的に高い地位)
- 高学歴である(社会的に高い地位)
県庁職員がエリートに思われる理由
全ての県庁職員は前述のエリートの要素を備えているかというと、そうではありません。
では、なぜ県庁職員にはエリートのイメージがあるのでしょうか。
理由を3つ説明します。
社会的な信用が高いから
よく言われることですが、公務員は余程のことがない限り、住宅ローンやクレジットカードの審査で落ちることはないと思います。
これは、社会的な信用が高いからです。
あらゆる場における初対面での「〇〇県庁に勤めています」は効果バツグンです。
仕事内容を説明しなくても「こいつは怪しい奴じゃなさそうだ」と安心感をもってもらえます。
偏差値の高い大学の出身者が多そうだから
公務員になるためには公務員試験に合格する必要があります。
公務員試験は職種によって多少の差異はあるものの、かなりの科目を勉強する必要があります。
地方公務員の試験対策に必要な勉強時間は1000時間とも言われ、1年かけて予備校に通う方もいます。
- 文章理解や数的処理、人文科学などの教養科目
- 行政、法律、経済などの専門科目
- 教養論文、面接
また、自治体によっては倍率が高いため、高得点を取らなければ受かりません。
そのため、公務員試験にはいわゆる学歴フィルターは存在しませんが、蓋を開けてみると結果的に合格者は高学歴な場合が多いと思います。
私がいた自治体では、あまり学歴の話はしなかったものの、東大京大卒も少なくない人数いました。
社会のルールを作っている人たちだから
確かに、地方公共団体は条例や規則を制定するなど、社会のルールを作る立場にあります。
また、ハローワークのような職業斡旋や地域の産業振興をリードするような事業もあるため、県庁職員が社会のルールメイカーのように思われるかも知れません。
しかしながら、条例は法令の範囲内で議会の議決により制定されるものですし、社会のルール作りと言っても当然ながら地方公務員が一方的に支配的なルールを作っているわけではありません。
県庁職員がエリートではない理由
私が県庁職員がエリートではないと思う理由は3つです。
高い専門性を持っているわけではないから
エリートの定義から言えば、「将来その社会の知的指導者層の一人となりうるような優秀な素質」があることでしたが、県庁職員は数年に一度の人事異動(ジョブローテーション)を経験し、都度異なる分野を一から勉強して、ジェネラリストになるようにキャリアを積んでいきます。
そのため、知的指導者になり得るような専門性のある仕事をするわけではないのです。
公務員であることを鼻にかけて働けないから
エリートには、プライドがあって自信満々な感じがイメージされますが、公務員でそのような態度を取りながら仕事をすることはできないでしょう。
県庁職員であっても、市民や事業者に接する機会は多くあります。そのようなとき、鼻にかけながら仕事をしていてはすぐにクレームが来てしまいます。
ただでさえバッシンクが多い公務員。支配的な態度で仕事はできません。
職員はどちらかというと謙虚な人が多いイメージでした。
給料が特別に高いわけではないから
エリートはお金持ちのイメージがありますが、県庁職員の給料はそこまで高くないです。
総務省が実施した「令和5年地方公務員給与実態調査結果」によれば、都道府県庁職員の平均給与月額(残業代や手当を含む月給)は約41万です。いわゆるボーナスが年4ヶ月分とすると、年収は大体650万(平均年齢42.5歳)になります。
確かに、大都市以外の地方都市では、県庁よりも少ない給料の企業が多くありますが、公務員の給与は民間賃金準拠方式という制度で定められており、民間企業と比較して高くなりすぎることはありません。
エリートのイメージから考えるお金持ちとは程遠いですよね。
公務員試験に受かるのはそれなりに高学歴という話をしましたが、民間に勤める同級生と年収を比べると数百万は低かったりしました…
まとめ
結論、県庁職員はエリートではないことを説明してきました。
どんな職業に就いたとしても、エリートを鼻にかけるような人にはなりたくないですね。
『職業に貴賎なし』という言葉があるように、あんまり考えない方が精神衛生上良いと思います。
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